解 説
 「スーダラ節」や映画「無責任」シリーズで一世を風靡したクレージーキャッツの植木等主演の幻の名画「本日ただいま誕生」の35mmフィルムが35年の時を経て発見され、このたびデジタル化され甦りました。
 「本日ただいま誕生」は1978年3月にクランクイン、日本の四季を織り込んでの全国的なロケーションを敢行し1年掛かりで完成された作品です。波瀾万丈な半生を生きた曹洞宗の住職を、植木等が自ら頭髪を丸め演じています。1979年5月より全国10地区の東映直営館で上映される予定で予告編まで出来上がっていましたが、とある事情で公開されぬまま倉庫に眠る事となり現在に至りました。
 物語は、第二次世界大戦で右肩の自由を失い、敗戦でシベリアに抑留され、零下40度の極寒で両足を凍傷におかされ麻酔なしで両足を切断、生死の境を彷徨しながら荒廃と混乱の日本に帰国、両足義肢の孤独に耐え“生きる”ことに壮絶な戦いをいどんでいく曹洞宗法永寺住職の故小沢道雄師の波乱万丈の半生を綴っています。
 監督には『鉄道員』『冬の華』『駅station』等を監督した降旗康男、キャストには中村敦夫・北川和夫・川谷拓三・蟹江敬三・室田日出夫・江藤潤・山口いづみ・原泉・河原崎健三・ 春川ますみ・ 赤座美代子・常田富士夫・戸浦六宏、友情出演でハナ肇・谷啓・桜井センリ・犬塚弘・荒井注など豪華メンバーが揃いました。
 2014年の東京国際映画祭にて35年ぶりに特別上映としてスクリーン上映が叶いました。上映日当日は、降旗監督も駆けつけ『長い間観ることができなかったので、自分が手がけた作品と認識できるまでに少し時間がかかりましたが、確かに私が手がけた作品です。完成まで時間がかかり途中頓挫しそうになりましたが、植木等さんの情熱で完成にこぎつけました。戦争というものは、敵を撃ち殺すだけでなく、生き残るために仲間や隣人も見捨てなければならない。いかにあのしんどい時代を生きたかということが伝わればいいと思う 。』と戦争の描き方など降旗監督ならではのお考えを述べていました。

あらすじ
第二次大戦、戦場で右肩の自由を失い、敗戦でシベリアに抑留されていた大沢雄平(植木等)は零下四十度を越える極寒の貨車の中で凍傷におかされ、両足を切断する。生死の境を彷徨しながら、引揚船で敗戦による荒廃と混乱の日本にやっと帰国。「よう帰って来た」と涙する母との再会の喜びも束の間、元上官の母娘の家に寄宿して、慣れない義足をつけて生きなければならなかった。その時、雄平は高子(宇津宮雅代)と知り合った。そして雄平は再手術をした後、病院の片隅で細々と商売を始める。そこで、雄平を満州の荒野に置き去りにした男、横田(川谷拓三) と坂本(中村敦夫) に再会する。土下座して許しを乞う二人と共に、雄平は小さな会社を興す。商いも繁盛し、高子の真情を知り、彼女を愛し始めるのだった。だが、現実は夢を見させない。会社は倒産し、心を開き生活を共にした高子とのどん底の生活、そして別れがやってきた。九死に一生を得た生に次々と訪れる困難。流転三界、雄平は、頭を剃り、頭陀袋を下げて放浪の旅に出る。義足での托鉢行脚の放浪中、見知らぬ人々との交りの中から、きらめくような真理を会得し、自らの法悦を説き、安心立命の境地へ変貌をとげていくのだった……。